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矛盾2(白ひげ海賊団)

 

 
無限に炎を生み出しながらエースは、必死に己の焦りと戦っていた。攻撃はヒットする。だがどれだけ当ててもダメージを受けているように見えない。むしろエースの攻撃に慣れつつあるように思える。中距離の単純な攻撃はもう避けられる。近接まで引き付けて撃ち込む。距離が縮まれば向こうの爪も届く。相手が覇気を纏ってるとは言え、ロギアの身は簡単には傷つかない。しかし鳥の膂力は想像以上に凄まじかった。かすっただけで吹っ飛ばされて、地面に叩きつけられる前に受身をとる。噛んだ砂を吐く。迫りくる第二撃を避けて距離をとりたいが、間合いは常に相手のものだ。速度では適わない。至近で炎を噴き上げる。怯むのを追撃、その繰り返し。蒼く陽炎のように揺れる翼のどこに疲労を見出せばいいのかわからない。比してこちらの体力は削られていく。
「クソッ」
再び旋回から降下の姿勢へ。獲物を狙う猛禽のそれ。何度も同じ手。身構える。長い尾が美しくたなびいて。弾丸のように飛来する。中距離で牽制の炎。かわされる。連続した攻撃もことごとく避けられ、角度を変えた急襲。近づいたところを最大火力で迎撃。火を恐れない動物はいない。不死鳥が、鳥の本能に支配されているならなおさら。
「!!」
エースの放った火球を一直線に突き破って、業火と幻炎の塊が現れる。炎に臆する理由など、本当は何一つない、不死の鳥。目が、合った。ヒトのときの男に良く似た、眠そうなアイスブルー。その、曇りなき殺意。
爆風を切った翼が空気を叩く。衝撃。とっさの炎の防御を突き抜ける鉤爪。エースの胴を易々と掴む。ぎちりと締めあげられて息が止る。変化できない。灼いた端から再生する爪は緩む気配もない。
(拙い)
もがく間もなく、獲物を捕えた鳥が羽ばたき上昇に転じる。その寸前。
鼻先をかすめた一閃。鳥の脚を付根で断ち切り、片翼を落とし、優美極まりない首を両断する。
「!サッチ!!」
「あー…やっぱ無理かぁ」
無数の炎を吐いて再生する不死鳥が怒りとも嘆きともつかない叫びをあげる。苦痛は、あるのだろうか。苦痛を感じるのは鳥なのか、あの男なのか。再び天高く距離をとって鳥は悠然と空に弧を描く。
「待たせたな、エース」
「…悪ィ。助かった」
「斬撃じゃやっぱ駄目だなぁ…効きゃしねぇ」
親友を(そのはずだ)平然と四つ切りにして、サッチは心底残念そうに嘆息する。散々燃やしておいて何だが、エースはその神経を少し疑う。
「はかったようなタイミングだったなァ。ありゃ単純に鳥の脳みそってわけでもなさそうだな」
「ああ、もう牽制は効かねぇと思う。どれくらい知性ってあんのかな」
「あー…なんせマルコだしなァ……」
「前にもあったんだよな?」
「おう。もうえれー昔だけどよ」
「そん時はどうしたんだ?」
「なーんも。…そんときは他でひと暴れした後らしくってな、勝手に力尽きた」
「…どれくらいで力尽きるんだ」
「……三日三晩暴れて、一週間ほど呑まず食わずで飛んで、って言ってたな」
「………」
そんなバケモノといったいどうやって体力勝負をしろというのか。
「あー…でもそんときは覇気なんざ使えなかったしなー…」
もっと手強くなってんだろうなー、と不穏な台詞をさらりと吐いて、サッチは頭上を仰ぐ。青い空の中を、蒼い鳥が警戒するように旋回する。空の青とも海の青とも見紛うような蒼が光を発しながらゆったりと力強く羽ばたく光景は、この状況でなければどれほど美しいものだったろうか。
「船に海楼石はあるのか?」
「…ある、が、海軍からの略奪品だからな。人用の枷がいくつかある程度だ」
「なら海に落とせばいいんだよな?」
「まあ、そうだろうな」
「…何人ぶら下がれば落ちっかな」
エース本人は至極真面目に言ったつもりだったが、サッチは意表を突かれたらしい。ぶはっと吹き出して、この非常時に腹を抱えて笑いだす。
「うははははは、った…確かにっジョズがぶら下がったらひとたまりもないかもしれねぇよな!ぶら下がってみるか?おまえとジョズとオヤジで!!」
全員能力者じゃねぇか!引き上げる方が大変だっての…。ツボに入ったらしいサッチが尚もしつこく笑うのが腹立たしくて膝を蹴る。
「真面目に考えろよ!」
「わあってるって。ただまあ、まわり全部海なら有効かもしれねぇがな。陸地がありゃそこに逃げ込める。ぶら下がってもあのスピードで地面に叩きつけられるなァ。その程度じゃジョズもオヤジも死にゃしねぇけどよ」
「そうか…」
「おれらの役目はとりあえず囮だ。本船が準備してる。それまでせいぜいあの鳥が飽きて逃げださねぇように相手するぞ」
 「…了解」
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