地に伏せたからだを抱きあげたら軽かった。
わずか21gが抜け出ていっただけなのに。
花を、運んでいるようだった。
その花びらがこぼれないように、その柔らかい葉をいためないように。
既に折りとられた花を大事にだいじに。
流れ切った血が、それ以上もうあふれないように。
眠るひとを起こさないように。
人が触れるたび強張っていた肩が、すんなりと腕の中に納まった。
文句も抗いもなく、くしゃくしゃの頭がことんと胸にもたれた。
歩みにあわせて、こぼれた腕がたあいなく揺れた。
バイバイ、というみたいに。
「運ばれることの無心に揺れている花と滴とあなたの鎖骨」(東 直子)
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